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【全部無料の電子出版】

全部無料の電子出版

第1回 じぶんで本を出版したい人が知っておくべきこと

投稿日:2013年10月21日 表示回数:3281 views

宮崎綾子
宮崎綾子

電子書籍なら簡単に出版できる?

KDPに代表されるような電子書籍を、じぶんで出版したいと思う人のためのガイドをお送りしていきたいと思います。
いま、アマゾンやKoboで販売されている電子書籍が人気です。電子書籍専用の端末やiPhoneなどのスマートフォンからいつでも購入でき、すぐに読めるのが特長です。また、実店舗の書店で本を売るのとは違い、出版社でなくても本を売ることが出来ます。そう、「本を出したいが本を出せる」自由が与えられたわけです。しかも、印刷をする必要もありませんし、本の在庫を保存しておく場所も不要、なので、「やる気」とそこそこの知識があれば、基本的にお金をかけることなく本を出版することができます。

いままで「じぶんの本を作ってみたいけれどお金が掛かるのが……」と思っていた人や、「原稿は手元にすでにあるけれど、なかなか出版してくれるところが決まらなくて……」といった人にとってはまさに朗報。ちょっとがんばれば、じぶんで本を出版できてしまう、しかもインターネットのサービスを使うので、場合によっては世界に向けて本を発表できるようになったのです。

この連載では、「じぶんで電子書籍を出版する方法」を順に説明していきたいと思います。

電子書籍にはどんなものがあるのか?

電子書籍とひとくちに言っても、さまざまな種類があります。そこで、まずはいくつかの代表例を紹介しながら、電子書籍の形式を分類しておきます。ちなみに、「電子書籍ストア」などの販売方法とは関係なく、見た目や使い勝手の上からでの分類です(そのほかの電子書籍ストアについても次回触れる予定ですが、この連載では、基本的にはアマゾンでの販売を目指します)。

1) リフロー型(テキスト可変)

現在購入できる電子書籍の大半が、このリフロー型です。データの中身はテキストや画像で作られていて、Webページによく似ています。Webページが本のようなかたちに切り取られて、ページをめくるようにして閲覧できるようになったものというとイメージが付きやすいでしょう。特長は文字サイズや位置が固定されておらず、用意されたページのサイズによって変わっていく点です。紙の書籍のように版面に固定されている印刷物とはもっとも異なる点です。また、Webページのように、ほとんどの場合、文字のサイズを閲覧者が調整できるようになっています。電子書籍は紙の書籍よりも大きな文字にすることもでき、コンピュータを使い慣れた若い人にだけでなく、視力が弱くなってきた中年以上の人にもありがたい機能のサービスです。

リフロー型電子書籍は凝ったレイアウトはできません。文字がメインの小説、エッセイを始めとする読み物の分野を中心に利用されています。
リフロー型の電子書籍が採用されている代表例は、Kindle本、Koboの本、紀伊國屋書店Kinoppyなどです。

iPhone1

リフロー型の電子書籍画面(『政府は必ず嘘をつく』堤未果著)

iPhone2

このように文字サイズを変更できる

図は、iPhoneで閲覧したリフロー型の電子書籍。書体を変えたり、文字のサイズを変えたりできることがわかります。ただ、文字サイズや行間を変えることはできても、版面との余白を変えられるわけではない(マージン/パディングのデフォルトは設定できるとしても、すべての端末にふさわしい設定には事実上できません)ので、紙の書籍と比べるとムダな空白が現れるなど、書籍デザイナーや編集者にとっては気になる問題はあります。

2) フィックス型(画像による固定レイアウト)

現在購入できるコミックの電子書籍は、ほぼすべてこのタイプです。1ページ分の画像を1冊分順番に束ねたもので、文字も含めてすべて画像の一枚絵になっています。閲覧するときは画面を拡大・縮小したり、スクロールさせながら読んでいきます。このスクロール方法には端末やサービスごとに違いがあり、データの作成方法にも多少違いがあります。 フィックス型が採用されている電子書籍の代表例は、KindleやKobo、紀伊國屋書店、Yahoo!ブックス、角川BookWalkerなど多くの書店で購入できるコミックブックスです。写真集などにも利用されています。

フィックス型

フィックス型の電子書籍画面(『ブラックジャックによろしく』佐藤秀峰著)

iPad上のiBooksで閲覧したフィックス型(画像)の電子書籍は横置きにすれば、マンガを見開きで読むように読めます。iPhoneなどでは画像が縮小表示されるため、逐一拡大して読むことになります。そこで、小さな画面でも閲覧しやすいようにコマ移動ができる仕組みを組み込んだものあります。

3) 中間型(テキストリフロー+レイアウトフィックス等)

リフロー型の利点は文字サイズが変えられ、どの端末でも読みやすくできることですが、レイアウトは複雑なことができません。一方フィックス型はイラストなどを掲載する分にはよいですが、1ページ分の分量を変えられないですし、文字も拡大・縮小できません。そこで中間的なデータもあります。いくつかの方法がありますし、見栄えにもそれぞれ大きな違いがありまが、「端末サイズによってレイアウトを変えられる」「画像の位置などは移動せずに文字サイズだけを変えられる」などの機能を持ったものがあります。

例としては、EPUB3のフィックスレイアウト機能を部分的に使った(リフロー型とフィックス型のページが混在する)電子書籍や、Adobe InDesignを含むAdobe Degital Publishing Suiteで作成できる電子書籍(iPadやiPhoneに特化した雑誌のようなレイアウトを作成)、アップルのiBooks Authorで作成した電子書籍、シャープのXMDF 3.0形式の電子書籍などがあります。こちらのデータ作成は、リフロー型やフィックス型にくらべるとかなり手間はかかります。個人で作るのは少し難しい、ということがあるかもしれません。

中間型ibooks

中間型の電子書籍画面(iBooks用の教材『Life on Earth』)

iBooks用に作られた中間型の電子書籍。横置きのレイアウトでは配置が自由で固定されていますがテキストは画像ではないので読みやすくなります(辞書をひいたり、文字列検索もできます)。また縦置きに向きを変更すると画像は横に移動して、文字は拡大縮小が可能になります。

中間型Adobe1

中間型の電子書籍画面(Adobe Publishing Suiteで作成された『Vogue』)

中間型Adobe2

中間型の電子書籍画面(『Vogue』で目次を表示)

横置きでは固定レイアウト、縦置きにしたときは下にスクロールしながら読んでいくリフローレイアウトになります。記事はスワイプして次のものへ切り替えます。これは、Adobe Digital Publishing Suiteを使用しています。大手の雑誌社が採用していることが多く、iPhoneアプリや、iPadなどの雑誌(Newsstandアプリから購入できるデータ)としてデータを配信できる機能です。制作はAdobe InDesignを使用します。ツールは雑誌のレイアウトと同じものであっても、操作方法はインタラクティブ性やムービーの埋め込みなどのため多少異なる知識を習得する必要はあります。

以上の3種類のうち、個人で作る場合は(特にWeb制作やDTP制作のスキルがある場合を除き)、文字がほとんどの本を作るのであればリフロー型の電子書籍を、マンガや写真集など画像がメインの本を作るのであればフィックス型の電子書籍のスタイルを選択するのがよいでしょう。

すべてじぶんでできることの、いくつかのデメリット

電子書籍は文章を書いて、必要な図版を用意して本としてオーサリングするのであれば、パソコンひとつで作成できます。ある程度知識やツールを揃えておけば、無料でじぶんで作成できます。

ただ、ほとんどのことをじぶんでおやりになっても問題はないのですが、人に頼んだほうがいいこともあります。以下にいくつかの例を挙げましょう。

 〈テスト的な読者〉

最初の読者が発売前にいると安心です。これは家族でも友人でも、ネット上の知り合いでもいいかもしれません。他人の目を借りることで、客観的に見て「おかしいところがある」「意味がわからない」「読みづらい(読むために戸惑ったことがある等)」などの情報を閲覧するメディアそのものとして根本的な問題がないかを判断してもらえるでしょう。例えば推敲しすぎて紹介していた内容が前後してしまい、解説が後手にまわってしまう、というようなことがあります。また、沢山見出しを付けてしまって、階層構造がおかしくなる(目次の立て方がおかしい)ということは、よくあります。

 〈誤字脱字〉

校正にまつわる内容です。これも、じぶんで書いているとどうしても内容に目がいってしまうために気づきにくいものです。事実確認などの検証や、社会的な責任から差別用語がないかを評価するなども校閲校正の範疇とも言えますが、いろいろ考え出すとこれはキリがありません。ただ、本としての体裁をしっかり整えたいな、とお望みであれば、やはり読み手ががっかりするような表記の間違えやレイアウトのミスは防ぎたいものです。これも友人などに頼めるのであればお願いしてみるとよいでしょう。他人の目が入ると意外なミスに気づいたりするものです。

〈表紙デザイン〉

電子書籍にも、表紙が必要です。表紙は本の顔となり、またチラシ代わりにもなりますので、本の内容をよく表している表紙のほうが、より多くの人に本を手に取ってもらえる助けになるでしょう。実際のところ、テクニカルな問題だけで言えば、表紙のグラフィックデザインが無くても、Kindleストアなどでは本の配布が可能ですが、やはりせっかくならば、表紙は作りたいのではないでしょうか。グラフィックデザインやイラストが得意という人であれば、このチャンスにその能力を活かしましょう。ただ、文章は得意だが絵ごころはまったく、カンタンな画像処理ができるソフトさえない、という方も少なくないでしょう。いざとなれば、この部分だけは多少お金を払ってでも他人に依頼してみるか検討してもいいかもしれません。

〈宣伝・広報〉

「アマゾンで本を売る方法」といったKindle本もちらほら販売されています(笑)。ごく端的に言えば、電子書籍の宣伝や広報(パブリシティ)は、WebマーケティングやWeb PRをするのとよく似ています。紙の書店では営業に行って本を置いて貰い、本のポップを立ててよりお客さんの目に触れるような工夫をしますが、電子書籍では店舗がネット上にあり、またその本を特別な場所に置いてもらう手立ても基本的にありません。それを、自分で広めていくことになるわけですから、決して簡単なこととは言えません。特に、電子書籍がブーム化してきた現在は、すでに沢山の電子書籍が存在しているためあらたに目を引くには、それなりの施策も必要です。これらについては、発売以前、以降、継続的に検討していく必要があるでしょう。

〈スケジュール〉

とにかくよいものを作りたい、書きたいと思っているうちに、なかなか終わりが見えなくなるというパターンもまま、あります。社長本や人生の大半を書き切ろうとする自伝などではよくあることでしょう。ブログなどと一緒で、どんどん公開していくほうがフィードバックを得てやる気を奮い立たせることもでき完成の近道になるでしょう。必ずしも「人の手を借りる」わけではありませんが、完璧なものができあがったら公開しようと考えていてもなかなか進まない、という場合は、「目標を人に公開する」「一部の内容を公開する」「公開する日付を約束する」など、うまく人との関わりを利用していくとよいでしょう。

さて、次回は、電子書籍を作成するにはどんなサービスやソフトを用意すればいいか、配信するにはどのサービスを使うべきかについて紹介していきます。

 

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