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【原稿生産力を高める仕事術】

原稿生産力を高める技術

第6回 大量の書類をいかに管理するか【資料・校正紙・参照元リスト】

投稿日:2014年4月8日 表示回数:1442 views

小田宏一
小田宏一

長文の原稿執筆を加速させる連載「原稿生産力を高める仕事術」。最終回となる第6回目は書類管理術について考えます。原稿を書くには取材とともに資料収集が必要であり、その量も原稿量に比例して膨れ上がっていくものです。さらに執筆が長期化したり、複数の案件を並行して取り組んだりという場合には、書類管理が必須となってきます。今回は執筆に関する書類のうち「資料」「校正紙」「参照元リスト」の3つを取り上げ、管理のためのアイテムやルールなどについてご紹介しましょう。

【資料】webは紙出力、紛失防ぐサイズ統一

冒頭にも触れましたが、原稿執筆に当たっては取材および資料収集による情報把握が不可欠です。文章の長短に関わらず、情報は一定の割合で織り込まれるのが妥当であり、それが読者にとっても有意義だからです。書き手は読者が求める情報の深さ、また幅広さを熟慮しながら資料収集を重ねていきますが、それら資料を無頓着に山積させるようなことをしてしまえば、執筆時には参考とする記述がある資料をまず探し出し、それから記述を探すといった時間ロスが多発するでしょう。そうして書き上げる頃には、見逃せないほどの多大な時間を浪費してしまっているのです。

画像は私の執筆資料ラックです。市販のカラーボックスで、1つの書籍で1段ずつ使って管理しています。これを見ていただければご安心いただけるでしょうが、これからご紹介する方法は至ってシンプルです。執筆のために最低限守るべきルール、そして行うべきアクションとして参考にしていただければと思います。

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大量の書類を管理する筆者の「執筆資料ラック」

1,図書館や資料室でコピーした収集資料

収集する資料の量にもよりますが、時間的効率と正確性から考えると、ノートへの書き写し、PCへの入力は避けたいところ。コピーが可能な著作物であれば、必要ページをコピーする方が早くて懸命です。この時のポイントとして、下記の3点があります。

・裏紙や不用紙を細く切った「しおり」を事前に作っておく
=コピーするページにはさみ、一度にコピーする。付箋はコピー時に剥がしにくいので不向き。

・コピーする用紙はA4またはA3で統一
=A判とB判が混合すると、資料同士が混ざって紛失するリスクが生じる。基本的にはA4、それ以上の大きさはA3で対応したい。

・コピーした資料のページと書名を記録しておく
=引用箇所の明記、後述の参照元リスト作成時に役立つ。

の3点です。あわせて時間的な余裕があれば、強粘着タイプの付箋http://www.mmm.co.jp/office/post_it/list38/index.html)に「コピーした理由」を書いておくと、執筆途中で見返した時、原稿への書き漏れがないかどうか確認でき便利です。

2,著者や出版社からの提供資料

資料は自分で調べるだけでなく、著者や出版社から提供・支給されるものもあります。これに関しても3つのポイントがあります。

・受領時に「何を受け取ったか」「返却の要・不要」を確認し記録する
=人の手を経て届く資料である以上、漏れやミスの可能性が少なからずあります。そのため、受領時に資料の種類や返却の要・不要を必ず確認をしておきましょう。要返却の借用資料については、期日も確認しておくとベターです。

・資料確認毎に不要ページを除外する ※借用資料を除く
=文献やファイルを丸ごとコピーしたような提供資料の場合、コピーした紙の枚数もかなり多くなります。これをそのまま綴じて管理すると、いざ資料を使う際に時間ロスとなりますから、資料確認毎に不要なページを除外するということを習慣化します。ただ、不要と判断したページがのちに必要となることも少なからずあるため、すぐに廃棄せずストックしておきましょう。

・借用資料は、発刊直後から1カ月以内に返却
=借用資料は、遅くとも発刊や公開の直後から1カ月以内に返却するようにします。これは発刊前であれば、原稿修正の可能性があるからです。また、発刊後に間が空いてしまうと、今度は返却忘れなどのトラブルにつながりかねません。返却不要な他の資料は、今後に続編を書く可能性がなければ処分して良いと思います。

3,webサイト上での収集、データ受領の資料

最新の経済指標や各種データ、業界等によってはニュース・話題などの内容もwebサイトから情報収集した方が確実というケースが少なくありません。情報が正確かどうかの判断は閲覧者に委ねられますが、基礎知識の習得や情報の全体概要を把握するには有用であり、私自身も日常的に各種webサイトの情報を執筆に役立てています。

これらwebサイトの閲覧時にはブラウザのブックマーク機能の利用、画面キャプチャーをPDFやJPEGデータにて保存するなど、いくつかの方法で収集資料の保管ができます。もちろんすべてをPC上で済ませるということもでき、紙で出力するよりも効率的だと感じる方もいるでしょう。ただ、私は自身の経験から「資料が膨大になればなるほど、管理場所は一つにするべき」だと考えています。webサイトの情報であっても、後に執筆資料として見返す必要がありそうなら、紙に出力しておいた方がいいと思うのです。それをまとめて他の資料とともに保管しておくことで、執筆時の書き漏れ防止、また突然のサイト停止時にも記載情報を確認しつつ書き進めることができます。

これはメールやメディアで受領したデータも同様であり、受領時に行うデータの内容確認と同じタイミングで、紙にて出力するようにしています。少し手間はかかりますが、紙で出力し、資料の全容を把握して執筆を着手するだけでも、書き進めるスピードは格段に上がります。書いている途中で「この記述は資料の何ページあたりで見た」「あの資料にデータが記載されているかも」など、ふと思い浮かんでくることは少なくありません。これが当初に計画していた以上の詳細な情報の記述、新しい論理展開など、読者にとってより有益な原稿へと進化させることにつながっていくのです。

もう1点、追記しておきたいのが、ドキュメントスキャナーによるデータ保管の有用性です。私自身もScanSnap S1500http://scansnap.fujitsu.com/jp/product/s1500/)を所有し、必要に応じて紙資料をデータ化しています。ただ、ドキュメントスキャナーは簡単とはいえ、多少なりとも作業時間を費やします。基本的には今後使う可能性がある資料のみに使用を留め、ファイル名についてもルール設定しておいた方が良いでしょう。

【校正紙】段階ごとに管理が基本、破棄は発刊後に

原稿の校正は、執筆とは異なる専門性が求められる作業です。ただ近年では、執筆者や編集者が校正するケースが非常に多くあります。また、DTPへの入稿前に原稿修正するということもあるため、総じて校正紙として記すことにします。

校正紙は一時的に保管しておく必要がありますが、その理由は下記の2点です。

① 修正や削除を指示した箇所が、以降の原稿で反映されているかの確認
② 自分が指示した事を記録しておくため

これはいわゆる朱入れをした、修正や削除の指示を出したページのみという訳ではありません。何も手を加えないページであっても、「そのままでOK」という意味合いがありますから、あわせて保管しておく必要があるのです。ただ、書籍や社史などページ数が多い原稿ともなれば、校正紙も膨大です。たとえば200ページの書籍を制作するとして、だいたい発刊までに微調整含め6回程度は校正のやり取りを行います。この場合、見開きでページ印刷を行いますから、校正紙は600枚に達することになります。

この場合、上記の理由①だけであれば、新しい校正を確認した時点で、前段階の校正紙を破棄することもできそうです。ただ、②にあるように万一校正漏れや誤植が発生した場合に、責任の所在を明確にさせるために、すべての校正紙は発刊まで破棄しないのが原則です。
また保管については、初校、二校、念校…と段階ごとにまとめておくのが基本。混ざってしまうと判別がつきませんから、注意しましょう。あわせて、朱を入れたページに付箋をつけておくと、次の校正時に反映確認がしやすくなります。

【参照元リスト】残すべき情報をリストに集約、紙&データで保管

最後に参照元リストです。論文など原稿によっては、文中に引用した文献、参考にした資料を明記する必要が生じるため、少なくともメモなどへ書きとどめると思います。ただ、この原稿明記が不要であったとしても、今後において類似した原稿の執筆をする可能性がありそうであれば、後年でもわかるようリストを作成しておくことをおすすめします。

参照元リストには、取材および情報収集した人、資料に関する詳細を記載しておきます。取材であれば、取材相手の連絡先(名前、住所、電話、メールアドレスなど)とやり取りした手段、取材日時、経緯などでしょうか。資料であれば、書名または資料名、発行元、参照ページ、資料が配置されている場所、収集理由など。これらすべての事項を把握する必要はありませんが、記載情報が多いほど、後で見返した際に記憶が蘇るきっかけとなることでしょう。またあわせて、別紙に記したメモ書きや取材相手の名刺、パンフレット等も、できれば一緒に保管しておきましょう。

この参照元リストは長期にわたる保管となるため、紙+データ併用により誤消去や破損のリスクを回避しておきたいものです。データ量はそう大きくないため心配は無用でしょうが、多数存在する他のファイルに埋没する可能性があるため、ファイル名についてある程度ルール設定しておいた方が良いでしょう。

これまでの6回にわたる連載では、とくに長文の原稿執筆に役立つ、原稿生産力を高めるテクニックやアイテムをご紹介してまいりました。研究者や作家、書籍ライターでない限りは数万字にも及ぶ長文の原稿を執筆するという機会は、人生においてそう多くないでしょう。それでも、連載をお読みの誰かひとりにお役立てできればとの思いで綴らせていただきました。今後は本連載記事をもとにして、長文の原稿執筆に関するノウハウを電子書籍にまとめ、発刊させていただく予定です。これから先、もし長文を書く必要が生じた際には、同書を読み返していただき、参考にしていただけたらと思います。ご期待ください。末筆ながら、連載をお読みいただいたすべての皆様に心から感謝申し上げます。

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