publiss連載記事

【はじめての電子書籍】

はじめての電子書籍

これからの電子書籍はどうなるのか

投稿日:2014年2月21日 表示回数:1175 views

和田 稔

これまでの6回にわたる【はじめての電子書籍】の連載で、電子書籍に興味はあるけれど今一歩活用に踏み出せていない方向けに様々な角度からKindleの活用法を紹介してきました。少しでもKindleで読書をしてみようと考えて頂ければ幸いです。

電子書籍は今、まさに普及期にあります。そして、私は電子書籍は単なる紙の書籍の代替物ではなく、新しいコンテンツマーケットだとも考えています。最終回は、今後の電子書籍のあり方を予想してみることにします。

「Chikirinの日記」の育て方の衝撃

2013年11月26日に電子書籍のあり方を大きく変えうる事件が起こりました。有名ブロガーであるChikirinさんがセルフパブリシングで完全新作、書き下ろしのKindle本を出版されたのです。しかも980円という価格設定です。通常100円程度のセルフパブリシングの本の中では、強気の価格です。それまでもすでに有名な作家の方がKindle本を出版するケースはあったのですが、いずれも過去のメルマガのサマリー的な内容であったり、すでに出版されている本のダイジェスト版であったりするケースが多く、価格も200円から300円程度のものが主流でした。

そのような状況の中、Chikirinさんはあえて紙の本と大差ない価格設定で、内容も紙の本と同程度のボリューム感のある完全新作をKindle本で出してきたのです。

著者と読者が直接つながる電子書籍

著者側にとって、紙の本を出版する最大のメリットは、認知度とブランド力の向上でした。紙の本を出版すれば、書店の流通に乗ることができ、幅広い人の目に留まることになります。一方で認知度とブランド力の向上には欠かせない紙の書籍の出版ですが、著者一人の力だけでは出せないというデメリットもあります。

この状態に一石を投じたの「Chikirinの日記」の育て方 でした。

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すでにブログや紙の書籍において知名度を獲得しているChikirinさんが敢えて出版社を経由せず、自分のファンに向けてセルフパブリシングでKindle本を出版し、そしてヒットしたのです。

なぜChikirinさんは出版者を通さずに敢えて、セルフパブリシングで本を出したのでしょうか? 「Chikirinの日記」の育て方の中で、紙の書籍を出版した理由はブログの読者を増やすためだと書かれています。Chikirinさんはそれまで、一般的だった人気ブロガーが紙の書籍を出版してステージを上がるという流れを目指したのではなく、あくまで活動の母艦はブログと位置づけ、これまでブログを読んでいない読者層にリーチするために紙の本を出版されたのです。

そして認知度とブランド力を高めた上でChikirinさんはブログ上で電子書籍販売の告知をおこないました。Chikirinさんは書店や出版者を介さずに届けたいときに読者にメッセージを届けられる仕組みを完成させたのです。

入り口としての電子書籍、出口としての電子書籍

この一連の流れによって、ある一定以上の知名度、ブランド力を獲得した著者にとって一番自由に表現し、読者にメッセージを届けることができる場が電子書籍であることが分かってきました。今後、ブログやメルマガなどのWeb媒体を活用したこのような展開は増えていくと予想できます。

一方で、連載の第2回で触れましたが、紙の書籍を出版する前の実績作りとしてスタートアップの方が電子書籍を出版するケースも今後増えてくるでしょう。すなわち、電子書籍は出版の世界において、入り口と出口の部分を担うと私は考えています。そして、紙の出版よりも自由で、良い意味でゆるい感じのコンテンツマーケットが形成されると考えています。紙の書籍のマーケットと多少競合する部分もあるかもしれませんが、全体としては紙の書籍とは異なった新しい表現のステージに進化していくと私は予想しています。

電子書籍が日本のコンテンツ産業をより豊かなものにしてくれることを私は期待しています。

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