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【電子書籍執筆タスク管理術】

電子書籍執筆タスク管理術

9_自分自身のことを書く−プロのライターでも味わった執筆の苦痛

投稿日:2014年2月6日 表示回数:1426 views

publiss編集部
publiss編集部

テクニカルライターになってから10年以上が経ちました。その間、数多くのアプリケーションや製品などについて執筆してきましたが、「自分自身のこと」について書いたことは、ほとんどありませんでした。解説書や説明書の場合はおおよその定石があり、自分も慣れているのですが、こと自分自身のこととなりますと、まったく勝手が異なります。自分がいつもどんな風に仕事を進めているのかを、よく考えたことなどほとんどなく、それをさらに自分以外の人に説明することになるとは、考えてもみませんでした。

そんな私の執筆体験記をお伝えします。

【プロフィール】

海老名久美(えびなくみ)

技術翻訳者/テクニカルライター。東京都出身、在住。日本女子大学人間社会学部文化学科卒。旅行会社での企画職、DTPオペレーター、テクニカルライター、翻訳者、セミナー講師等の仕事を経て、2009年4月より完全にフリーランスに。現在は、CNET Japan、シゴタノ!タスクセラピーなどで、本・アプリ・新製品などのレビューや、タスク管理にまつわる記事を執筆しているほか、主にIT分野の翻訳をしている。

執筆経験:

『「次もよろしく!」と言われるための仕事術』(impress QuickBooks)
『知的生産性を上げるiPhone活用術』(辰巳出版)小原裕太・海老名久美共著
『瞬解! 新TOEICテスト Part5 文法編』(こう書房)原澤久恵著の執筆協力
その他、エクスメディア(出版社)勤務時代に『超図解』シリーズ(ソフトウェア解説本)の共同執筆多数。

ブログ:SPEAQ(スピーク) http://speaq.jp

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自分を客観的にとらえるポイントを絞るのがよい

冒頭で書いたように、実際、書けば書くほど迷走してしまい、最終的な着地点を見失ってしまいました。そして、半分以上を書いたところで、構成を1からやり直したのです。最初に立てた構成案に書いたことは、自分が言いたいことではありましたが、それは、本文の中に込める「思い」のようなものであって、表に「出すべき部分ではない」ということに気づいたからです。個人的な事情があってこその独自のタスク管理なのですが、もっと自分のことを客観的に観察して、「他の人にも役立ちそうな部分」に焦点を絞るべきだと、執筆の終盤になってようやく気づいたわけです。それほど、自分のことについて書くのは大変な作業でした。

すでに、タスクセラピーのコーチ陣が、すばらしい著書を書いていましたので、正直、そのことも意識しましたし、自分の職業がライターであるということから、勝手にプレッシャーを感じていたこともあり、弱気になったり投げやりな気持ちになったり、こんなに感情が揺れたのも久しぶりだったかもしれません。

客観的に見ていても死角になる部分はその道のプロに聞くのがよい

締め切り間際、執筆も終盤にさしかかってからの変更や迷いで、編集者さんや監修の佐々木正悟さんには御迷惑をおかけしましたが、お忙しいところ、皆さんから的確なアドバイスや励ましを頂きまして、とても勇気付けられました。人から言われて初めて気づくことというのは多く、自分では見えにくい背中側から、しっかりと支えてもらったという感じです。

知っている言葉と使える言葉は違うと思ったほうがよい

また、今回自分の本を書いていて、いつも以上に大変だったのは「言葉選び」です。テクニカルライティングで使う語いと、いわゆるビジネス書で使う語いは似ているようでかなり違っていました。解説書やレビューでは、自分の感情や意見を表すような言葉を使うことはほとんどありませんが、今回は自分の本ですから自分の考えをたくさん書いています。口頭であれば、サラッと使ってしまえる言葉でも、本に書くとなると慎重にならなければなりません。少し書いては国語辞典をひき、知っている言葉と使える言葉は違うということを思い知らされました。

反省することは多いのですが、本を書かなければ気づかなかったことがほとんどですから、これをチャンスと思って精進し、今後も挑戦し続けたいと思います。

「いつもどおり」と「自分らしく」を心がけた私の執筆タスク管理術

電子書籍の執筆に当たっては、特別なタスク管理を行ったわけではなく、出版した「「次もよろしく!」と言われるための仕事術」に書いたとおりのやり方をいつもどおりに実行していました。

1.締め切りの予定はGoogleカレンダーに入力した
Googleカレンダーには、編集者さんとの約束である締め切り日を入力するのみです。実際の執筆に伴う作業のあれこれは、Googleカレンダーには入力しません。具体的にいつ執筆を行うのか、執筆に伴う作業は終わったのかなどを管理することは、Googleカレンダーでは難しいため、Googleカレンダーには最終的な締め切りのみを入力しておき、ふだんは見ません。

2.執筆タスクはOmniFocusで管理した
これまでの執筆経験から、1日何文字ずつ書き進めれば良いかをざっと見積もり、目次構成案に合わせて、章や節などの1項目ごとに、1つの執筆タスクをOmniFocus上で作成して、仮の作業日時を決めました。
仮の作業日の朝、実際にできるかどうかを見極めながら、タスクの組み方を微調整し、その日の仕事に取り組みました。

3.他の仕事を入れないようにした
いつもなら他の仕事を受けている期間を、執筆のために空けました。いつもの仕事をしながら、さらに執筆するということは、体力的にも精神的にも私には難しいので、そうせざるを得なかったと言った方が正しいかもしれません。連載執筆以外の新規の案件を受けないことは、今後の仕事が来なくなる可能性があったり、執筆期間中の収入がなくなったりするリスクを伴いますが、あっちもこっちも少しずつ進めるという仕事のやり方があまり得意ではありませんので、そこは覚悟してのぞみました。

4.ポメラをいつでも持ち歩いた
これは、執筆した本の中でも書きましたが、株式会社キングジムのポメラは、女性の鞄でもすっぽり入るサイズで軽量、キーボードを開いたら即入力可能な上、キーボードの打鍵感も良く、カフェなどでも開きやすいことから、いつも以上に持ち歩いていました。特に、外出の多い期間と執筆期間が重なったため、ポメラを持っていて本当に助かりました。

5.他のコーチの電子書籍を読まなかった
技術的な面とメンタル的な面の両方の意味があるのですが、自分が執筆している間は、すでに刊行されているタスクセラピーコーチ陣の著書は、あえて読まないようにしていました。以前に読んでいたものは別として、読み返したり、新たに読み始めたりしないようにしたのです。それは、影響されやすい自分は、読めば絶対に文章に影響が及ぶと思ったのと、他の人の説明などを読んで、自分がさらに自信をなくして落ち込むことを避けるためでした。

「千里の道も一歩から」

ありきたりですが、これは、私がDTPオペレーターをやっていたときから、先の見えない仕事を前にしたときに、必ず最初に自分に言い聞かせていた言葉です。デザイナーさんの書いた手書きの下書きを元に、デジタルデータを起こすという仕事でしたが、用紙いっぱいにびっしりと指示の書き込まれた下書き原稿を目の前にすると、最初は途方に暮れるものの、線を1本ずつでも書いていけば、気づいたときにはデータ化が終わるのだと、自分に言い聞かせるために使っていました。
本を書くという作業も、これと似たところがあります。書き始めは「終わらないんじゃないか」という不安がありますが、少しずつでも書いていけば、いつかは終わります。しかし、そもそもマラソンが苦手な私は、技術的な面よりもメンタル的な面で、執筆作業を完走することが大変だと分かっていましたので、タスク管理の大部分をメンタル管理にあてていたのでした。

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【著書】

ブログ「ライフハック心理学」の佐々木正悟氏監修、「本格的なライフハッカーの仕事術が余すところなく紹介されています。アナログ・デジタルを問わず、膨大なツールとテクニックに接してきたCnetテクニカルライターならではの方法論が満載です。」と推薦。

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